シンガポール発!マーケットブログ
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サクソバンク本社 チーフ・エコノミスト ~デビット・カーズボエルの見解~
日本語要約版
現在の環境
わずか半年で市場環境がガラリと変わった。3月時点では誰も悲観的であったが、今はフランス、ドイツの第2四半期GDPが前期比でプラス成長、米GDPも年率換算でマイナス1%で安定している。S&P500指数は3月の安値から50%上昇し1000に乗せ、高金利債もレーティング会社から20%デフォルトの可能性があると評価されているにも関わらず上昇を続けている。企業収益も今後半年で22%増加の見込みである。簡潔に言うと市場は完全に景気回復を織り込み始めている。
マーケットの力
我々はマーケットの力を以下4つのセグメントに分けることができると信じている。中でもここ半年の上昇は始めの3つの要因が大きく寄与していると考える。
1. Liquidity - 流動性
FEDがバランスシートを拡大しながらも市場に流動性を供給したことが過去半年のリスク資産の上昇に貢献していることは疑う余地もない。FEDは国民の税金を代償に金融機関の不良債権処理にも大きく貢献した。
2. Positioning - ポジショニング
年初の市場は間違いなく悲観的で、ショートポジションが多く積まれ、ロングポジションはわずかに留まり、現金保有が進んでいた。多くのファンドマネージャーがリスク資産から遠ざかっていた。しかし資産の時価評価の変更を背景に株価が上昇、ベンチマークを追うミューチュアル・ファンドマネージャーが懐疑的ながらも株のエクスポージャーを拡大せざるを得なくなった。
3. Technicalities - テクニカリティー
貸し株プログラムが大きく変わってきている。貸し株を行うファンドへの資金流入が滞り、カウンターパーティーリスク等からショートをすること自体が難しくなった。こういった環境の変化も株価上昇を助けたと思われる。
4. Fundamentals - ファンダメンタルズ
ファンダメンタルズ経済は依然危機的な状態にある。ここ半年で債務は膨張し、政府の赤字財政支出は拡大。個人の貯蓄率、住宅の在庫、実際の失業者数(失業率は低下)全てが増加し、消費者マインドも冷え込んだ状態である。
我々の仮説
シナリオ1 "全ては大丈夫である"
政府支出に助けられ在庫調整も進む。労働市場も安定化し、これまでのリセッションと同じように経済成長も回復。
シナリオ2 "問題の分散化"
税負担と債務の長期化(満期日を延長)により問題を分散化。GDP成長の鈍化と個人消費の減速は避けられないが、短期的な崩壊シナリオの可能性は低い。
シナリオ3 "問題は拡大"
政府が財政赤字を穴埋めできず、国債市場は崩壊し金利は上昇。政府の救済措置が裏目に出てTEDスプレッドも銀行間のカウンターパーティーリスクも拡大。今後経済状況は更に悪化する悪夢のシナリオである。 今後のシナリオの行方を見る上で、どれだけ金利を押さえて国債を発行し財政赤字を埋められるかが注目点の一つとなる。
各シナリオの実現性
シナリオ1 10-20%
シナリオ2 60-80%
シナリオ3 10-20%
マーケットは何処へ
株式市場は完璧な楽観シナリオを織り込んでおり、ファンダメンタルズ経済は相当改善しないと企業収益期待やGDP期待成長率などのギャップの穴埋めは出来ない。しかし一方で今後更なる上昇がないとは言い切れない。マーケットのモメンタムは強く、大半の金融機関は強気のレポートを出している。
実は2007年の金融危機を先行して反映したのが債券市場であり、株価市場は後追いする形となった。現在の債券市場は改善傾向にあり、社債も格付けに関わらず政府債との金利差が縮小している。又、社債の発行市場も堅調である。企業の信用度を計るCDS市場でも、Itraxx指数が下降トレンドとなっている。
再び2007年
短期的にはまだ上昇余地があると考えるが、現在の株式市場とマクロ経済の間にはまだまだ不均衡が生じている。国民がやっと消費のレバレッジを下げる中、米政府はお構いなしに債券を発行し続けている。
再び2007年に戻ったかのように、市場参加者の多くは問題の本質を無視していると思われる。我々は投資家に今後半年から一年の間におそらく実需が市場を失望させる可能性が高いことを警告したい。 シナリオ3が起きない限り10月、11月中に急落するとは思わないが、株価と現実とのギャップがデータを通じて拡大すると共にボラティリティーも上昇すると予測している。
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